○市貝町認知症と共に生きるまちづくり条例

令和7年9月8日

条例第22号

前文

認知症は、一昔前には「ボケ」若しくは「痴呆」などと呼ばれ、「病」の認識は低かったと思います。しかし、医学の進歩により治療の困難な疾病と位置付けられ、症状の特徴が明確にされるのに伴い概念が固まってくると、認知症にあてはまる症状を持つ者が2040年(令和22年)には584万人に達するということが分かりました。

このため国では、2012年(平成24年)にオレンジプラン、続く2015年(平成27年)には新オレンジプランをまとめ、更に2019年(令和元年)には認知症施策推進大綱を策定し、医療・介護と予防に加え、共生を前面に出した取り組みを行うことが目標とされるようになりました。そして2024年(令和6年)には、認知症の人は基本的人権を持つ個人と明記した「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」(以下、「基本法」という。)が施行される運びとなりました。

基本法以前の社会では、重症に至る前に予防緩和することが重要との考え方が強く出ていましたが、基本法では、認知症の症状が表れてもこれまでと同じように住み慣れた地域で自分らしく生活できるようにしようという考え方に重心が移ったように思われます。

高齢者の6人に1人が認知症を発症すると言われる中で、わたしたちには認知症の人が基本的人権を持つ個人として、自分の意志で社会生活が営めるように社会をつくり変えていくことが求められています。

このため「認知症の人が住み慣れた地域で尊厳をもって暮らし続けられるまち」を目指し、ここに条例を制定します。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、認知症と共に生きるまちづくりの基本理念を定め、町の責務並びに町民、事業者、地域組織及び関係機関の役割を明らかにするとともに、認知症施策の基本となる事項を定めることにより、認知症の人とその家族を含む誰もが、住み慣れた地域の中で安心して暮らし続けることができるよう助け合えるまちの実現に資することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 認知症 介護保険法(平成9年法律第123号)第5条の2第1項に規定する認知症をいう。

(2) 認知症の人とその家族等 認知症の人、その家族及びその他日常生活において密接な関係を有する者をいう。

(3) 町民 町内に居住する者及び町内に通勤し、又は通学する者をいう。

(4) 関係機関 医療、介護又は福祉に携わる事業者及びその他認知症の人とその家族等を支援する機関をいう。

(5) 事業者 町内で事業を営む者(関係機関を除く)をいう。

(6) 地域組織 自治会その他一定の地域に住所を有する者により構成された組織及び町内で活動するボランティア団体をいう。

(基本理念)

第3条 町並びに町民、事業者、地域組織及び関係機関(以下「各主体」という。)は、次に掲げる基本理念に基づき、認知症と共に生きるまちづくりに取り組むものとする。

(1) 認知症の人とその家族等の尊厳と意思が尊重され、可能な限り住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるまちを目指すこと。

(2) 各主体が認知症に関する正しい知識及び理解を深め、認知症の人とその家族等の視点に立ち、認知症を我が事として考えること。

(3) 各主体がその役割及び責務を認識し相互に連携し合いながら、認知症の人のみならずその家族等に寄り添うことで、町全体で認知症の人とその家族等を支えること。

第2章 町の責務並びに各主体の役割

(町の責務)

第4条 町は、前条の基本理念にのっとり、本条例の目的を実現するため、認知症に関する施策を総合的に推進するものとする。

2 町は、認知症施策の推進に当たっては、認知症の人とその家族等の意思を尊重するとともに、各主体と連携して取り組むものとする。

(町民の役割)

第5条 町民は、認知症は誰もがなり得るものであることを認識し、認知症に関する正しい知識を持ち、認知症と共に生きることについて理解を深めるよう努めるものとする。

2 町民は、認知症の人とその家族等が住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるよう、交流、見守りその他町民相互の助け合いに取り組むよう努めるとともに、必要に応じて関係機関等に相談するよう努めるものとする。

3 町民は、自らの健康維持等に資する活動に取り組むよう努め、自らの望む暮らしについてあらかじめ周囲と話し合うよう努めるとともに、町及び各主体が実施する認知症施策及び取組に協力するよう努めるものとする。

(関係機関の役割)

第6条 関係機関は、認知症に関する専門的な知識及び技能の向上に努め、認知症の人とその家族等に良質かつ適切なサービスが提供されるよう努めるものとする。

2 関係機関は、認知症の人とその家族等に対する相談体制を整えるとともに、各主体と相互に連携して適切な支援を切れ目なく行うよう努めるものとする。

3 関係機関は、町及び各主体が実施する認知症施策及び取組に積極的に協力するよう努めるものとする。

(事業者の役割)

第7条 事業者は、従業者が認知症に関する正しい知識と理解に基づき適切な配慮を行うことで、認知症の人とその家族等が暮らしに必要なサービス等を安心して利用できるよう、従業者に対し必要な教育を実施するよう努めるものとする。

2 事業者は、認知症の人とその家族等が働きやすい環境の整備及び認知症の人とその家族等の就労の継続のために必要な配慮を行うよう努めるものとする。

3 事業者は、町及び各主体が実施する認知症施策及び取組に協力するよう努めるものとする。

(地域組織の役割)

第8条 地域組織は、認知症に関する理解を深め、認知症の人とその家族等の生活の見守りその他の支援を行うとともに、認知症の人とその家族等と地域住民が交流を図ることができる居場所づくりに取り組むよう努めるものとする。

2 地域組織は、町及び各主体が実施する認知症施策及び取組に協力するよう努めるものとする。

第3章 基本的施策

(知識の普及啓発及び人材育成)

第9条 町は、町民、事業者及び地域組織が認知症に関する正しい知識を持ち、理解を深めることができるよう、広報その他の啓発活動を行うものとする。

2 町は、幅広い世代の町民、関係機関、事業者及び地域組織に対し、認知症サポーター(国が定める講座を受講し、認知症に関する正しい知識を持ち地域又は職域で認知症の人とその家族等を支える者をいう。以下同じ。)の養成を推進するものとする。

3 町は、認知症の予防等に関する知識を啓発するとともに、各主体が行う認知症予防等に資する活動を支援するものとする。

(相談支援体制の整備)

第10条 町は、認知症の疑いのある人に早期に気づき、また認知症の人とその家族等が早期に必要な支援を受けられるよう、相談体制の整備及び充実を図るものとする。

2 町は、認知症に関する相談を行った者等に対し、その状況に応じた切れ目ない支援を行うため、医療機関及び関係機関等と連携し必要な施策を講ずるものとする。

(地域づくり及び社会参加の促進)

第11条 町は、認知症の人とその家族等が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、各主体と協力し、地域における見守り体制の整備を図るものとする。

2 町は、認知症の人とその家族等が社会での役割及び生きがいを持って活動することができるよう、社会参加の場の確保を図るものとする。

(権利擁護)

第12条 何人も、認知症の人に対し、虐待をしてはならない。

2 虐待を受けたと思われる認知症の人を発見した者は、速やかに、これを町に通報するよう努めなければならない。

3 町は、認知症の人の尊厳を保持するため、認知症の人に対する虐待を早期に発見することができる体制を整備するとともに、虐待を受けた認知症の人の安全の確保及び虐待の防止に資する養護者への支援を適切に行うものとする。

4 町は、認知症の人の意思決定の支援及び権利利益の保護を図るため、成年後見制度の利用を促進するものとする。

(非常時等の対応)

第13条 町は、災害その他の非常の事態となった場合における認知症の人の安全確保に資するため、関係機関等と連携し、必要な施策を講ずるものとする。

第4章 雑則

(委任)

第14条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、町長が別に定める。

この条例は、公布の日から施行する。

市貝町認知症と共に生きるまちづくり条例

令和7年9月8日 条例第22号

(令和7年9月8日施行)