○市貝町環境基本条例

令和5年3月10日

条例第14号

目次

前文

第1章 総則(第1条~第7条)

第2章 環境の保全及び創造に関する基本的施策(第8条~第10条)

第3章 環境の保全及び創造に関する推進施策(第11条~第19条)

第4章 環境審議会(第20条)

第5章 補則(第21条)

附則

市貝町は、茨城県との県境をつくる八溝山地の西麓に位置し、降雪少なく東日本大震災を除いて大きな災害は知られてはいない。気候が穏やかで自然生態系の恵みである農作物は豊かに育ち、生物多様性にも富み、このため絶滅危惧種であるサシバの日本有数の繁殖地として残り、その営巣密度の高さは内外に評価されるようになった。

その一方で、赤羽工業団地周辺では、農地を含む緑地のスプロール的な転用が進行し、社会経済活動による環境への負荷が増大している。また、四車線化された主要地方道宇都宮茂木線のバイパスが開通したことに伴い県都宇都宮市から車で50分ほどでアクセスできるようになるとともに、直近では地球温暖化原因ガスの排出量が小さいLRT(ライト・レール・トランジット)の導入が進み、開発圧力は著しく高まってきている。

市貝町は、県都と県境の奥山との中間に位置し、谷津田が織り成す里山には自然文化資源が豊かに保たれていることから、町関係者はもちろんのこと都会の生活者にも将来にわたって安心感と魅力を感じられるまちとなるためには、環境と経済の両立に地域社会のつながりを加え、一体として取り組んでいくことが求められている。さらに地球温暖化という深刻な状況に直面し、産業構造や日常の生活様式を根底から変える必要性が高まってきた。

ここに、この条例を制定し、公民一体となり総力をあげて今日の環境問題の解決に向け取り組んでゆく決意である。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、本町の良好な環境の保全及び創造について基本理念を定め、町、町民、事業者及び滞在者の責務を明らかにするとともに、環境の保全及び創造に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の町民の健康及び安全かつ安心で文化的な生活並びに豊かな自然環境及び生物多様性の確保に寄与するとともに、ひいては地球環境の保全に貢献することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 環境の保全及び創造 安全で安心な生活環境、良好な自然環境その他の健全で恵み豊かな環境を保持し、又は創造し、過去に損なわれた自然環境を再生及び修復することをいう。

(2) 環境への負荷 人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全及び創造上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。

(3) 公害 環境の保全及び創造を図る上での支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下及び悪臭によって、人の健康又は生活環境に係る被害が生ずることをいう。

(4) 生物多様性 様々な生態系が存在すること並びに生物の種間及び種内に様々な差異が存在することをいう。

(基本理念)

第3条 環境の保全及び創造は、現在及び将来の世代の町民が健全で恵み豊かな環境の恵沢を持続して享受することができるように適切に行われなければならない。

2 環境の保全及び創造は、人と自然とが共生し、環境への負荷の少ない持続的に発展することができる社会が構築されることを目的として行われなければならない。

3 環境の保全及び創造は、すべての者が自らの課題として認識し、あらゆる日常生活及び事業活動において、適正な役割分担の下に自主的かつ積極的に取り組むことによって行わなければならない。

4 渡りをするサシバのように、広い空間を生息圏とする絶滅危惧種を守るためには、地域内の環境保全能力には限界があるため、環境の保全及び創造は、隣接する地域間を含む広域的連携、さらには国際的な連携によって推進されなければならない。

(町の責務)

第4条 町は前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、環境の保全及び創造に関する地域の自然的社会的条件に応じた基本的かつ総合的な施策を策定し、これを実施しなければならない。

2 町は、環境の保全及び創造に関する施策で、広域的な取り組みを必要とするものについては、国及び他の地方公共団体と協力して推進するよう努めなければならない。

3 町は、基本理念にのっとり、自ら率先して環境の保全及び創造に取り組むとともに、町民及び事業者の良好な環境の保全及び創造への取組を支援するように努めなければならない。

(町民の責務)

第5条 町民は、基本理念にのっとり、日常生活における資源及びエネルギーの節約、廃棄物の排出抑制等、環境への負荷を減らすことに努めなければならない。

2 前項に定めるもののほか、町民は基本理念にのっとり、環境の保全及び創造に自ら積極的に努めるとともに、町が実施する環境の保全及び創造に関する施策に協力するよう努めなければならない。

(事業者の責務)

第6条 事業者は、その事業活動を行うに当たっては、これに伴う公害の発生を防止し、又は自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

2 前項に定めるもののほか、事業者は、その事業活動について環境の保全及び創造に努めるとともに、町が実施する環境の保全及び創造に関する施策に協力するよう努めなければならない。

(滞在者の責務)

第7条 通勤、通学、旅行等で本町に滞在する者(以下「滞在者」という。)は、環境への負荷の低減その他の環境の保全及び創造に努めるとともに、町が実施する環境の保全及び創造に関する施策に協力するよう努めなければならない。

第2章 環境の保全及び創造に関する基本的施策

(施策の基本方針)

第8条 町は、環境の保全及び創造に関する施策の策定及び実施に当たっては、次に掲げる事項を基本として、施策相互の調整を図りつつ、これを総合的かつ計画的に行わなければならない。

(1) 町民の健康を増進し、生活環境を良好に保つため、大気、水、土壌その他の自然的構成要素を健全な状態で保全すること。

(2) 森林、農地、水辺地等における多様な自然環境が、その地域の自然的社会的条件に応じて保全及び回復され、人と自然が将来にわたって共生できるように、生物多様性を確保すること。

(3) 人と自然との豊かなふれあいを確保するとともに、本町の自然環境及び歴史的文化的な所産の保全に努め、良好な景観の形成を図り、質の高い環境を創造すること。

(4) 廃棄物の減量、資源の循環的利用及びエネルギーの有効利用を推進するとともに、環境の保全及び創造に関する技術等を活用することにより、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会を構築すること。

(5) 地球温暖化に対する適応及びその緩和並びに絶滅危惧種の保護、回復などの地球環境問題は、一つの地域の努力で解決できるものではないため、隣接する地域間を含む広域的連携、地方圏における大都市との連携、さらには国際的な連携により、地球的規模で持続可能な地域づくり政策を推進すること。

(環境基本計画)

第9条 町長は、環境の保全及び創造に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、環境の保全及び創造に関する基本的な計画(以下「環境基本計画」という。)を定めなければならない。

2 環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

(1) 環境の保全及び創造に関する目標及び施策の方向に関すること。

(2) 前号に掲げるもののほか、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 町長は、環境基本計画を定めるに当たっては、あらかじめ、町民、事業者又はこれらの者の組織する団体(以下「町民等」という。)の意見を反映するよう努めるとともに、市貝町環境審議会の意見を聴かなければならない。

4 町長は、環境基本計画を策定したときは、遅滞なく、これを公表するものとする。

5 前2項の規定は、環境基本計画を変更する場合について準用する。

(年次報告等)

第10条 町長は、毎年度、環境の状況及び環境の保全及び創造に関する施策の実施状況を明らかにした年次報告書を作成し、市貝町環境審議会に提出するとともに、これを公表するものとする。

第3章 環境の保全及び創造に関する推進施策

(規制等の措置)

第11条 町は、公害を防止するため、必要な指導、助言、規制等の措置を講ずるものとする。

2 前項に定めるもののほか、町は、環境及び生物多様性の保全上の支障を防止するために規制その他の必要な措置を講ずるものとする。

(助成の措置)

第12条 町は、町民等が環境負荷の低減を図るための施設の整備その他環境の保全及び創造に関する活動を促進するために必要があるときは、適正な助成その他の措置を講ずるよう努めるものとする。

(生物多様性の保全)

第13条 町は、サシバなど絶滅のおそれのある野生動植物の保護及びその生息・生育環境を守ること等により、生物多様性の保全に努めるものとする。

(持続可能な農林業の推進による自然生態系の保全)

第14条 町は、都市と農村の交流の中で谷津田再生や多種共存の森づくりを進めるとともに、減農薬や無農薬・減化学肥料や無化学肥料の施用など、自然と調和した農林業を拡大することにより、自然生態系を豊かにし、生命の躍動が感じられる潤いのある農村空間の創造に努めるものとする。

(環境教育、学習等の推進)

第15条 町は、町民等が環境の保全及び創造について理解を深め、これに関する活動に主体的積極的に参画できるよう、環境教育、学習を推進するとともに、都市生活者とも連携し、自然とのふれあいを通じて環境の保全及び創造に関する活動を行う意欲が増進されるように努めるものとする。

(自発的な活動の促進)

第16条 町は、町民等及び滞在者が自発的に行う自然保護に関する活動、再生資源に係る回収活動その他の環境の保全及び創造に関する活動が町の施策と連携し、促進されるよう必要な措置を講ずるものとする。

(情報の収集及び提供)

第17条 町は、環境の保全及び創造に関して必要な情報を収集するとともに、調査及び研究を実施し、教育及び学習の振興並びに町民等が自発的に行う活動の促進に資するため、個人及び法人の権利利益の保護に配慮しつつ、これらの情報等を適切に提供するように努めるものとする。

(推進体制の整備)

第18条 町は、環境の保全及び創造に関する施策を総合的に調整し、及び円滑に実施するために必要な庁内の体制を整備するものとする。

2 町は、環境の保全及び創造に関する施策を適切かつ効果的に実施するため、町民等と連携協力して取り組む体制の整備に努めるものとする。

(監視等の体制の整備)

第19条 町は、環境の状況を的確に把握し、並びに環境の保全及び創造に関する施策を適正に推進するために必要な監視、測定等の体制の整備に努めるものとする。

2 町は、前項の規定により把握した環境の状況を公表するものとする。

第4章 環境審議会

(環境審議会)

第20条 環境基本法(平成5年法律第91号)第44条の規定に基づき、市貝町環境審議会(以下「審議会」という。)を置く。

2 審議会は、町長の諮問に応じて、次に掲げる事項を調査審議する。

(1) 環境基本計画の策定及び変更に関すること。

(2) 年次報告に関すること。

(3) その他環境の保全及び創造に関する基本的事項

3 前2項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

第5章 補則

(委任)

第21条 この条例の施行に関し必要な事項は、別に定める。

(施行期日)

この条例は、令和5年4月1日から施行する。

市貝町環境基本条例

令和5年3月10日 条例第14号

(令和5年4月1日施行)